【法話】自利と利他〜反省を込めて〜

2019年にHBCラジオ「曹洞宗の時間」で放送された住職の法話原稿を掲載します。

おはようございます。帯広市 永祥寺 織田秀道です。今日は自分の未熟さを反省した経験をお話しします。

11月、看護師さんや介護職の方など対人援助職といわれる方々の研修の講師の依頼があり、「対人援助職自身のセルフケアと癒し」というテーマをいただいて講演をした時のことです。

お釈迦さまがお示しになった本当の幸せとは、「自分の安らぎを求める行い」、「他人を助ける行い」の二つを両立させた生き方です。周りの人に喜んでもらえた時、自分が必要とされていると実感できた時に幸せを感じられるというのは共感しやすい話だと思われます。

「他人を幸せにすることが自分をも幸せにする」。講演ではこれに基づいて話をしたのですが、その後のグループディスカッションで「自分のことも大事にしたほうがいいと思います」と指摘されて自分の間違いに気づきました。

その日の参加者は全員が社会福祉の仕事を志して働かれている方であり、そもそも自分のことよりも周りの人のことを優先しがちな優しい性格の人が多い傾向にあり、その思いが強いあまり働きすぎで心身の不調を抱えてしまう方も多い職種の方々でした。そのことが頭からすっかり抜け落ちたまま講話を組み立ててしまっていたのです。

仕事で日々疲れ切っている人に「他人に尽くすことが自分の幸せになる」というのは、自分を犠牲にせよと言われているようなものです。お釈迦さまが説かれた「自分の利益、他人の利益」のバランスが偏った話をしてしまったことに気づき、最後に慌てて補足の話をして無事終了となりました。

自分が水に溺れている間は、溺れている人を助けることはできません。まず自分が岸に上がることで周りが見渡せます。「まずは自分を大切に。同様に他人も大切に」

HBCラジオ「曹洞宗の時間」収録原稿より