天上天下唯我独尊が拡大解釈されていること

天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)の原語

お釈迦様がご生誕の際に発された言葉として知られる「天上天下唯我独尊」は7世紀にインドを旅して多くの経典を中国に持ち帰った玄奘が翻訳したものです。この原語はパーリ中部「アッチャリヤアッブダ経」にあり、「我は世界の最上者なり。我は世界の最年長者なり。これは最後の生まれであり、もはやさらなる生存はない」とのことです。
(宗務庁発行『釈尊伝』15ページを参照)

宗務庁発行「釈尊伝」

ネット上ではどうか

天上天下唯我独尊をネットで調べると「お釈迦様は自分1人が尊いと言ったわけではない。本当は、命ある私たちすべてが同じく尊いのだと宣言されたのです」とする記事がたくさん出てきます。この解釈は原語からかけ離れているというべきではないでしょうか。
いずれにせよ生まれたばかりの赤子が大人のように話すはずがないので原典も後代の創作に間違いありませんが、お釈迦様を信奉する人々の敬慕の念があって創作された説話です。

語句を紹介するなら自分の思いを入れずそのままの意味で紹介していただき、当時の仏教教団を取り巻く社会背景や価値観に思いを巡らせるきっかけとするのが良いような気がします。