過去のYouTube法話を文字起こししました

以前、法話巡礼33というイベントに機会をいただいて作った法話動画を原稿化する機会がありました。せっかく文字化したのでホームページにも置いておきます。以下駄文です。

SNSには気をつけよ

北海道帯広市 曹洞宗十勝山永祥寺 住職 織田秀道

 新型コロナウィルスの感染対策に細心の注意を払いながら過ごしております。SNSを頼りに市内の最新の感染情報を探すようになってみて、SNSの良し悪しを考えさせられます。

 今回は「人に伝える」ということについて。

 私たちの生活にすっかり定着したスマートフォン。誰でもSNSを通して言葉を発することができて、遠く離れた人と人とを結んでくれるものですが使い方次第では恐ろしい凶器となって人を傷つけもします。令和2年5月、テレビ番組に出演中だった女性が自らの命を絶たれた悲しいニュースがありましたが、それにはSNS上での執拗な誹謗中傷が影響したという話には大変ショックを受けました。皆様も心を痛められたことと思います。

 「以心伝心」

 昔、中国に慧能という禅師様がいらっしゃいました。優秀な弟子がたくさんいたそうで、現代のいわゆる禅宗は全て慧能禅師の弟子の流れをくむと言われています。偉大な慧能禅師ですが、経済的にとても苦しい家庭の生まれでした。教育も受けられなかったので文字が読めなかったのですが大変頭の良い少年だったそうで、街で人がお経を唱えているのを聞いただけで閃く体験があり出家をされます。住職は慧能さんがあまりに優秀だったので周りの僧侶から妬まれることがありそうだと心配しました。なので、僧侶たちから距離を取るために「お米つきの仕事」をすることになりました。

それからしばらくして、ある日の真夜中に住職のお部屋に呼ばれた慧能さんは住職から正式な後継者として認められたそうです。これが「以心伝心(心をもって心を伝える)」という禅の言葉のエピソードです。その住職は慧能さんにお釈迦様の教えを伝えるのに文字を使わず、ただ面と向かっての対話によってお釈迦様の教えを伝えたという話です。

最も有効な伝達の手段とは

アメリカの心理学者 アルバート・メラビアンの研究に「人間は人が話している内容と顔の表情や口調に矛盾があった場合、どの情報を重視するのか」というものがあります。その実験では、話の内容を重視する比率が7%、話し方が38%、顔の表情が55%という結果が出たそうです。話の内容よりも「話し方と表情」に注目しているということですね。

 人間は「顔の表情や話し方から得られる情報を頼りにコミュニケーションをする」。私は文字でのコミュニケーションには限界があると思っています。

 SNSでのコミュニケーションでは以心伝心ができませんから、自分の感情を正確に相手に伝えるにはかなりの注意が必要です。特に、人の行いを指摘して「それは良くないからこうした方がいいよ」と優しく諭すようなことはなおさらです。ただ意見したつもりでも、文字だとどんな感情で発せられた言葉なのかがわかりません。人前で叱られているのと同じ感覚にもなるでしょう。

 IT機器はもはや私たちの生活から切り離すことができない重要なツールです。使う上では、文字で他人に働きかけることの難しさを常に心がける必要があると感じます。そして、相手に配慮するのと同時に、自分に恐ろしい言葉が集まることがないように使用を控えて自分のことも守ってくださいね。

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